
このスキットル(アルコール類を携帯する容器)も、おそらく30年ほど前に購入したもの。
登山中心のアウトドアショップのショーケースに飾ってあったもので、いわゆるひとめぼれというやつ。


チタン製の愛好家という訳ではないが、普通によくあるステンレス製のスキットルではなくチタン製のこれを選んだのは、当時山登りに興じていたので、道具の軽量化という目的もあったのかもしれない。
チタン製だけあって流石に軽い。栓も小さなカップも当然チタン製。スクリュー式の栓にゴムのリングが付いていて、上から被せるだけのチタン製のカップを栓に押し込むと簡単に外れない構造だ。


カップは小さいので、ほとんど使わない。登山家や冒険家等がやっていたように、栓を外して口をつけて酒をあおるのがほとんどだった。

付いていた袋も良い感じの色はワインレッドでフランネルの生地だ。
購入してかなりの時間が経ったが、流石はチタン製、少しも凹んだり傷ついたりしていないが、このところ満たしていたブランデーの香りが染みついている。
軽さ故、この先行方不明になるかもしれないが、孫子の代まで使って行ってほしい逸品だ。
このスキットルを手にするたびに、あの頃の山行を思い出します。
30年前、山登りに夢中だった頃の自分。ショーケースに飾られていたチタン製のスキットルに一目惚れして、少し奮発して買ったこと。当時はまだチタン製の道具は珍しく、軽くて丈夫という評判に惹かれたのを覚えています。
山頂で栓を外して口をつけてブランデーをあおる。登山家や冒険家の真似事のようで、それがまたかっこよく感じられた時代でした。若かったんですね。
道具には、その時代の自分が宿っている気がします。
チタン製のスキットルは、あの頃の私が「本物にこだわりたい」と思っていた気持ちの結晶でもあります。ステンレスではなくチタンを選んだこと、ショーケースに飾られていたものをわざわざ出してもらったこと。そういう小さなこだわりが、今となっては懐かしい。
30年経ってもへこまず、傷つかず、ブランデーの香りだけが染みついている。チタンという素材の強さと、道具としての誠実さを感じます。
70歳を前にして思うのは、良い道具は時間を超えるということです。
流行りのアウトドアグッズは次々と新しいものが出てきます。でも本当に良いものは、10年後も20年後も、手元に残っています。
このスキットルも、私がいなくなった後も誰かの手の中にあるかもしれない。孫子の代まで使ってほしいと思うのは、道具への愛着だけでなく、自分が生きた時代の記憶を誰かに渡したいという気持ちがあるからかもしれません。
キャンプの夜、焚き火の前でこのスキットルを傾ける。それだけで、30年分の記憶が戻ってきます。これからも大切に、使い続けていきたいと思っています。

