50代、私はフルマラソンを走っていた。
42.195キロ。沿道の声援を背中に受けながら、アスファルトを蹴り続けた記憶がある。
足が棒になっても、息が上がっても、ゴールテープを切ったときの達成感は今でも体の奥に残っている。あの頃の私は、自分の体を信じて疑わなかった。
公務員として定年まで働き、異色の経験も数多くした。時には会社を立ち上げたり、懸案の課題に取り組んだこともある。世の中の熱量と、組織を動かす難しさと、何かを生み出す面白さを、あの仕事で初めて肌で知った。
定年を迎えたとき、正直に言えば、「やっと自分の時間が来た」と思っていた。
—
退職後に待っていたのは、楽園ではなかった。
再就職をしながら、気がついたら親の介護が始まっていた。
病院への付き添い、施設との交渉、夜中の電話。仕事と介護の間で、自分のことを考える余裕はほとんどなかった。看取りを経験し、後には相続が。登記の手続きも、専門家に丸投げするのではなく、自分で調べながら一つひとつやり遂げた。
「シニアの楽園」などというものは、最初からなかった。あったのは、現実だけだった。
そして完全にリタイアしたころ、予想していなかった知らせが届いた。
—
心臓に、問題が見つかった。
フルマラソンを走っていた体が、だ。
自覚症状はほとんどなかった。定期検診のデータが引っかかり、精密検査を受け、医師から手術を勧められた。頭の中が、しばらく真っ白になった。
「なぜ私が」とは、あまり思わなかった。思ったのは「このまま終わるのか」という、静かな問いだった。
手術を決断した。2年前のことだ。
手術台に乗る前夜、不思議と怖くはなかった。ただ、やり残したことの多さだけが、頭をよぎった。やってみたいことがある。行っていない国がある。会いたい人がいる。
—
手術後、世界の見え方が変わった。
退院後しばらくは、思うように体が動かなかった。階段がきつかった。少し歩くだけで疲れた。かつてフルマラソンを完走した体が、こんなにも変わってしまうのかと、静かに驚いた。
だが同時に、妙な解放感もあった。
「もう無理をしなくていい」ではなく、「やりたいことだけをやっていい」という感覚だ。残された時間の長さより、その密度を考えるようになった。
リハビリを続け、少しずつ日常を取り戻した。そして2年が経った今、私は動いている。
—
70歳の今、私がやっていること。
英検準1級を目指して、毎日勉強している。
英語は現役時代も使ってきたが、資格として形にしたことはなかった。「70歳で英検なんて」と笑う人もいるかもしれない。でも私には、理由がある。英語ができれば、もっと遠くへ行けるし、異国の人ともコミュニケーションが取れる。一人で、もっと深く旅ができる。
海外一人旅も始めた。手術後も、である。パスポートと地図と好奇心だけを持って、見知らぬ街を歩く時間は、今の私にとって最高の贅沢だ。
投資もやっている。全く知らない状態から、再就職先での資金運用の経験を活かして投資を始め、今は高配当株に軸足を移した。年金と配当が組み合わさったとき、老後の不安の形が少し変わってくる。これは実体験として書ける話だ。
一方で、カメラで動画を撮り、デスク周りのガジェットを試し、AIを使ってブログの戦略を立てる。昭和30年代生まれが、こんなことをやっているとは、若い頃の自分には想像もできなかっただろう。
先祖が残したわずかばかりの土地で、野菜作りにも挑戦してきた。無農薬野菜にこだわり、土づくりにもこだわり、自分の食べたい野菜を育てた日々もある。
また、推しのコンサートに行ったり、友人と飲みに行き、旅行をして、笑い、語る。それも、私の大切な3rd stepの一部だ。
—
同じ時代を生きる、あなたへ。
介護で疲れている人がいるかもしれない。相続の手続きに途方に暮れている人もいるかもしれない。健康への不安を、誰にも言えずに抱えている人も。
私に、答えはない。
ただ、経験はある。転んだ記録がある。それでも立ち上がった記録がある。
このブログ「123rd step」は、人生の3rd stepをリアルに生きる記録だ。1st(社会へ出る)、2nd(働き、育て、支える)を経て、今ようやく3歩目を踏み出している。
悩みながら、転げながら、それでも前に進んでいる。
同じ景色を見ている人に、この記録が届けばいい。それだけを思って、書き続ける。
—
このブログについて
**123rd step**(https://123rdstep.com)では、リタイア生活・資産運用・旅・ガジェット・日々の気づきを発信しています。
– 📓 より深い本音は **note「シニア一直線」** で → https://note.com/123rd_step
– 🎥 顔の見える発信は **YouTube** で(近日公開)
– 💬 日々のつぶやきは **X・Threads** で → @123rd_step
人生の3rd step、一緒に歩きましょう。
—
*昭和30年代生まれ・元公務員・完全リタイア済。航空会社立ち上げ、親の介護・看取り・相続登記、心臓手術を経て、今年70歳。英検準1級挑戦中。*
